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紺碧の太平洋に航跡を刻みつつ・・・「ブルーゼファー」
写真・文:idyllicocaen
十勝港に停泊中のブルーゼファー
十勝港のブルーゼファー
近海郵船の<東京~釧路~十勝>航路に就航中の「サブリナ」、「ブルーゼファー」が、1999年10月末日をもって同航路の旅客取扱を中止に伴い引退する。1990年の5月、7月に就航した両船は大都会東京と美しい自然と大地の国-釧路とを9年以上も結び続けてきた。丹頂鶴やキタキツネの集う大自然の国を身近に感じさせてくれた同船が引退するのはフェリーファンとして非常に残念である。そんな引退を前にした1999年8月20日、最後の思い出を作ろうと「ブルーゼファー」による釧路往復ツアーを決行した。

「自然に親しむ」をテーマにした「サブリナ」、「ブルーゼファー」両船はまさにこの航路にふさわしい船だ。船体外観の美しさはもとより、船内のインテリアもまさにラグジュアリーなクルージング趣向が凝らされている。美しい両船の船内インテリアの共通して言える点は、人目を引く派手な装飾は極力控えられており、「自然の美しさ」を引き出すような控えめな美しさが船をさらに魅力的にしているという点だ。

さて私が今回乗船したのは「ブルーゼファー」、本船のインテリアテーマは「風と大地」だそうだ。船内の壁、ソファー、廊下、ラウンジなどすべてが淡いピンクからブルーのカラーリングでまとめられている。とても目にやさしく、大きい窓から眼下に広がる美しい大自然がとても引き立って見える。まさに「自然に親しむ」ためのインテリアデザインなのだ。

aデッキホール「オーロラ」エントランス
bデッキフォワードサロン
cデッキコーヒーラウンジ外部デッキ(ビヤガーデン)
二羽の鶴が寄り添うファンネル
Aデッキ船首方向を望む

濃霧の中、釧路港を出港
十勝港フェリーターミナル
東京湾口で出会った「ふじ丸」
東京港に帰港した「ブルーゼファー」
東京港で出会った「さんふらわあとまこまい」
さて本船の現在の船内施設・サービスの現況だが、10月末日の引退を控え、乗船した8月20日の時点でも少しずつ船内設備サービスの縮小が感じられた。前回乗船した1996年から比べると、Aデッキ中央、Bデッキフォワードサロン裏にあった自販機コーナーはすでに閉鎖され、自販機はフロント裏のコーナーのみとなった。レストランメニューも多少合理化され、メニューが自体も減ったような気がする。「北海いくら丼」メニューからなくなっているのは少し寂しかった。(むろん乗船が夏季だったからかもしれないが・・・)先回楽しませていただいたブリッジ見学は、今回は行われなかった。

愛しのブルーゼファー船内・施設・サービスに「引退」の感が染みわたってくるのをみるのは残念でならない。売店では「さよならサブリナ・ブルーゼファー」のオリジナルtシャツも販売されている。tシャツデザインは「サブリナ」、「ブルーゼファー」をかたどった絵と「Thank's for long long time. We'll make the last voyage 1999」とサインされている。両船のオリジナルグッズは20%offのバーゲンだ。「あぁ、いよいよ引退してしまうんだなぁ」とつくづく感じさせる切ない光景であった。

そんな中でも客室乗務員、乗組員の笑顔、サービスはちっとも変わっていない。レストラン「プリマベーラ」では、各航路のフェリーが次々とカフェテリア・ビュッフェ方式を取り入れていく中でも、依然としてウェイター・ウェイトレスによるテーブルコンタクト方式を採用している。引退時期が近づくにつれ、船内施設など、ハード面での縮小は認めざるをえないが、伝統の近海郵船に息づいているソフト面でのサービス、快活さは以前にも増して磨きがかけられているような気がする。皆、愛しの「サブリナ」、「ブルーゼファー」の引退を何も感じずに見つめているわけではないのだ。乗組員一同の残念さがひしひしと伝わってくる。そんな中、サブリナは10月31日、ブルーゼファーは10月30日最後の航海を迎える。

何はともあれ釧路まで31時間、今回はファーストシングルを利用した。インサイドルームというのが非常に残念だがその他のステートルームはすべて2人部屋、4~5人部屋なので致し方ない。夏の時期は空席占有料金がかかるため、窓つきの部屋はシングル旅行客には利用しにくい。反面、家族や夫婦での旅行客にとってはありがたい話であろう。

予定によると、10月21日15:00~16:00頃、釧路港を前日(10月20日)に出港し東京に向かっている「にっぽん丸」と金華山沖当たりで対航するはずである。海図と、スケジュールをにらめつつ、14:00頃からフォワードサロンで水平線をみつめ続けた。ところが、時間がたつにつれ近海に薄い霧が立ちこめてきた・・・。この分だとかなり離れて対航しそうな気がする・・・。

14:50分頃前方左舷遙か遠くにうっすらと客船の影が現れた。「にっぽん丸」だ。白い船体に、赤いファンネル、船体は少し短めだ。しかし、残念ながら撮影するには距離がありすぎる。この距離で「にっぽん丸」であることがはっきり分かるような写真を撮るためには最低1000mmのレンズが必要だろう。いや1500mmくらい欲しいかもしれない。私は200mmまでのレンズしか持っていないので即あきらめた。「ブルーゼファー」と「にっぽん丸」が最接近したのは15:00頃、距離は8~10km以上はあっただろう。残念である。それはともかく、今回の航海、東日本フェリーの<大洗~室蘭>航路の就航船、BHLの<大洗~苫小牧>航路の就航船との対航も確認することができなかった。霧の影響か・・・。つくづく残念であった。

3日目、釧路港入港は07:30である。06:00過ぎの汽笛の音で目が覚めた。何事かと思って外を見ると釧路名物の濃霧である。昨日の薄霧とは違い今日の霧はかなり濃い。30mほど離れるともう背景が霞んでいる。こんな中でブルーゼファーは釧路港に入港していくのである。甲板に出ると霧の水滴がひんやりしていてかなり湿度がある。海水なんだか霧の真水なのか・・・分からないが甲板に出るととりあえず衣服もひんやりと濡れるのである。

フォワードサロンで進路を見ていると甲板員たちが船首にたち、霧の警戒にあったっている。要所要所で汽笛を鳴らしながら、「ブルーゼファー」は微速で釧路港内に入っていく。(といっても外は霧で全く見えないのでコンピュータ上での位置表示によるとであるが)釧路港入港予定時刻20分前、フロントからは釧路港入港のアナウンスが入る。アナウンスはあったものの、周囲に陸の気配は全く感じられない。霧で非常に視界が悪いのだ。07時20分。目前に突然フェリーターミナルのビルが現れた。距離はもうわずかしか離れていない。霧のため、目前にあるのが分からなかったのだ。まるでコンピュータの画面を切り替えたかのように突然現れたターミナルビルに、釧路の霧の濃さに私は驚いてしまった。

今回のプラン、釧路入港後、直ちに12:00出港東京行きの便でUターンする。当初は苫小牧までJRで、苫小牧から太平洋フェリーの「きそ」で名古屋へ、その後紀伊半島を南下、那智勝浦からBHLの「さんふらわあくろしお」で東京へ戻るプランを考えたが日程の都合上、今回も初心全うできずだ。このプランは次回にとっておくことにした。

乗船受付は09:30より、乗船開始は11:15分だ。07:30に到着後3時間ほどの間、和商市場にいって釧路自慢の生鮮食料品を仕入れた。8月だからどれほどおいしいかは分からないが釧路の「ほっけ」、北海道でしか水揚げされないという「時不知」、「鱈子」を購入、アイスを詰めてもらいおみやげにした。早くも10:30頃Uターン、再び釧路港に戻ってきた。

釧路港ではチェックインを済ます前に、ターミナル対岸の埠頭に行き今年いっぱいで姿を消す「ブルーゼファー」撮影を試みた。今朝ひどかった霧は少しはましになってきているようだ。しかしやはり撮影にふさわしい光線状況とはほど遠い。とりあえずアングルを変えて数枚撮影、あきらめて再び「ブルーゼファー」に乗船した。

往航と同様部屋はファーストシングルのインサイドルームである。やはり船に乗っていて海が見えないというのはいただけない。フロントでアウトサイドルームを貸切った時の料金を尋ねた。返答はデラックスコンパートに移った場合、3人分の空席補充で何と2万円追加。すでにファーストで27,100円払っているというのに・・・。アウトサイドルームに移ると釧路から東京まで47,100円支払うことになる。あまりに現実的でないのでやはりインサイドルームで我慢することにした。

釧路出港は12:00。船は定刻より5分ほど遅れて釧路ターミナルを出港。霧の状況はあまり変わっていないが今朝よりはましである。東京まで32時間の船旅が今、始まった。下の送迎デッキでどこかで見たことのある旗が振られている。「サブリナ」、「ブルーゼファー」のフェアウェル記念の旗だ。旗には「Thank's for long long time. We'll make the last voyage 1999」と記されている。「サブリナ」、「ブルーゼファー」は1999年10月いっぱいまで就航するものの、私にとっては今日が最後の航海である。「ブルーゼファー」を引っ張っていたタグボートが離れた時、もう長く見ることもないであろう釧路の土地に私も挨拶を告げた。

釧路を出港して1時間霧は徐々に晴れてきた。東京からの観光バスとフェリーを組み合わせたツアーの大部分が十勝から乗船するためか、釧路港から十勝間では空席が少々目立つ。十勝までは約3時間半の船旅だ。レストランでは昼食の営業が一段落し、コーヒーラウンジにてランチスナックが営業している。

時計を見ると15時10分を回ったところだ。気がついたら大きな窓の向こう側に長い長い防波堤が見えている。いよいよ十勝港入港だ。船は奥へと進み防波堤をかわしたところで左へ変針、十勝ターミナルに着岸する。見えてきた。十勝ターミナルの新しくて黄色いターミナルビルが・・・。十勝港には乗客の乗降用のタラップは設置されていないため自動車用のランプウェイからの上下船となる。なお釧路から東京まで乗船する乗船客の十勝での一時寄港は原則として許されていない。旧BHLの<東京~大洗~苫小牧>航路-大洗港での扱いと同様だ。むろん停泊時間は1時間なので上陸してもどうしようもないだろう。

十勝港出港は17:00。出航後しばらくして、キャプテンからのスピーチ。航路上の天候はおおむね良好なものの多少のうねりがあるとのこと。19:00頃からはレストランにて夕食の営業が始まる。私は牛丼を注文、丼と味噌汁、漬け物で900円。決して安くはないがまぁまぁの味だった。21:00頃からはコーヒーラウンジで夜食の営業が始まる。うどん、そば、たこやき、やきそばなど軽食が提供される。驚いたのはBZオリジナルのカクテルメニュー6つも加えられていたことだ。

翌日、「サブリナ」との対航は午前10:00頃。残念ながら今回も確認することが出来なかった。バードウォッチャーたちは朝から望遠鏡を持ち込んでひたすら海鳥探しである。前回のツアーの時も海鳥観察をしているグループによく出会った。それだけこの航路はネイチャーラバーたちの間でポピュラーだということだ。同じ北海道航路でも以前BHLの苫小牧ゆきに乗船したときはこれほどまでもバードウォッチャーたちに出会うことはなかった。さすがは何度も乗船しているらしく「津軽海峡を通過するときはよく揺れる」などとコメントしていた。(この船は津軽海峡は通らないんだけどなぁ・・・まぁ北海道沖から本州沖に入る間だと解釈しておこう)

先ほどから船は外房沖から東京湾口に向けて航海している。進行方向正面に見えるのは伊豆大島である。船は大島をよけて東京湾に進路を向けた。大小数々の船が現れては消えていく。今回はいい客船の写真が一枚も撮れなかったなぁと残念に思っていると正面に客船らしき船影が・・・。なんと商船三井の「ふじ丸」が先を走っているではないか。「ふじ丸」は東京湾を出て西に向かっているので写真がとれる距離まで近づくかは分からない。「ブルーゼファー」よ、急げ、「ふじ丸」よ、止まれ、といった心境である。結局、相模湾に沈む夕日を絡めた「ふじ丸」の写真をそこそこに撮影することが出来た。18:00頃に併走する予はずだった「すとれちあ丸」は、今回確認することが出来なかった。

19:00頃、船は横浜沖にさしかかった。往航時は確認することの出来なかった「ランドマークタワー」や「クイーンズスクエア」、「コスモクロック」や「ベイブリッジ」の明かりが美しい。右舷側には「海ほたる」の明かりが広がっている。都会に帰ってきた事を思わせるひとときである。東京湾に入ってからは時間が飛ぶように過ぎる。数々の船と対航するからであろう。

3日ぶりの東京FT。「ブルーゼファー」の接岸するバースの前に「さんふらわあとまこまい」が停泊している。ひたすら前後に長い貨物船で、さんふらわあマークが取って付けたように描かれている。まだ就航しているわけではないのでトラックの積み卸し等の仕事はない。「ブルーゼファー」を下船後、思う存分写真を撮らせていただいた。
頭上を全日空のジャンボ機が通り過ぎた。船は羽田空港沖を通過中である。このころ進行方向には臨海副都心の観覧車が見えてきた。レインボーブリッジ、東京タワーの明かりも美しい。「「ロイヤルステート」、「ファーストルーム」、「デラックスコンパート」をご利用のお客様、お部屋の鍵をフロントまでお返し下さい」のアナウンスが入ると東京FTは目と鼻の先だ。19:50東京発の「さんふらわあくろしお」とすれ違うはずだったが今回も発見できず・・残念。


3日間の釧路ツアーはこれをもって終了。さよなら「サブリナ」、「ブルーゼファー」。あの美しい2羽の丹頂鶴にもうあうことが出来ないと思うと寂しくも感じる。今回はクルーの皆さんにいろいろと無理させてしまったが、両船の引退にふさわしい記念旅を楽しむことができた。両船が今後どういう身の振り方をするのかはまだ分からないが是非最後まで安全航海を保ち続けてほしいものである。両船の10月末日の釧路航路引退を持って東京港FTから北海道行きのフェリーはすべて姿を消すことになる。


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