1997年09月19日、日本のクルーズフェリーの頂点ともいうべき存在である太平洋フェリーの「いしかり」に、ついに乗船する機会を得た。この航路は名古屋から仙台を経て北海道の苫小牧とを結ぶ約38時間の船旅だ。横浜に住んでいるから、北海道に行くのに名古屋を経由するとなると、とんでもない遠回りになってしまう。それで、なかなかこの「いしかり」に乗船する機会がなかったのだ。
しかし、今回は思い切って、たとえ遠回りをしてでも「いしかり」に乗ろうと計画した。理由はこの船が毎年のフェリー・オブ・ザ・イヤーでトップを受賞しており、クルーズを専門に扱う雑誌~cruise誌の人気投票でも連続して毎年1位を取っているからである。
乗船した後の率直な感想は、「素晴らしい!!」の一言につきた。さすがにフェリー・オブ・ザ・イヤーで毎年トップを受賞するだけのことはある。これからこのレポートの中で、「いしかり」のどこがどのように素晴らしいのかをじっくり取り上げたいと思う。この船の内装デザインコンセプトは「ときめきと出会う船旅」。そして基本的に船内は本場のクルージングリゾート地カリブのイメージで統一されている。
bデッキ部分のエントランスロビーには「welcome abord!!」と記された白いライフリングと現在位置の案内板が置かれており、これらは、これから始まる38時間のクルージングのイメージを大いに高揚させた。このエントランスロビーを含めた船内のパブリックスペースのほとんどの部分は、カリブのイメージを反映した毛足の長い青を基調にしたデザインの絨毯で彩られ、船内全体がクルージングを意識させる作りになっている。
この船の客室は基本的にcデッキとbデッキの前半部分、そしてaデッキの最前部に集中している。そしてa・bデッキ後方はすべて広々とした豪華なパブリックスペースになっている。パブリックスペースの施設を例を挙げるとbデッキには「インフォメーション」をはじめ、本格的な「ミニシアター」、喫茶スタンド「ヨットクラブ」、バー「カサブランカ」、レストラン「カリブ」、宴会場「摩周」、カラオケ「スタジオq」、多目的室「ローズルーム」、ミーティングルーム、展望通路などが、aデッキ後方には「スターライトラウンジ」等が設置されている。
上甲板に目を移すと、船の最上部に当たるトップデッキも解放されており、さらにaデッキには天体観察用の「星のデッキ」やスポーツを楽しむために風防のついた「オープンスカイホール」等も設けされている。実際に「オープンスカイホール」では、航海中にバトミントンを楽しんでいる乗客もいた。 かなりのスペースもあるのでミニテニス等も楽しむことができるだろう。
また最近のフェリーは各パブリックスペースの営業時間がほぼ分刻みで忙しいのに対し、「いしかり」はこのあたりもゆったりしている。レストランは毎食約2時間ほど営業するし、喫茶スタンドもほぼ終日営業している。さらに後方にあるバーも23:00までとゆったりとしておりbデッキ中央部に広く取られたショップも10時まで営業している。サウナ付き展望大浴場は24時間いつでも入浴できる。最近のフェリーが少人数制の合理化を進めていくなかでも、「太平洋フェリー」は、確かに一貫して気配りの行き届いた素晴らしいサービスを提供している。この当たりはさすがフェリー・オブ・ザ・イヤーのトップだけあると思う。
今回、私は苫小牧から名古屋まで乗船したのだが、途中仙台港に2日目の09:00に入港する。出航は12:00だから、仙台では約3時間ほど止まっていることになる。太平洋フェリーでは、名古屋まで乗船する人たちも、、希望者はこの仙台港で一時下船することができるようになっている。出航30分までに戻って来るようにとの注意を受け、「いってらっしゃい!!」と声をかけられて私もいったん下船した。外から「いしかり」の写真を数枚撮って船に戻ったときにはスタッフは「お帰りなさい」と笑顔で迎えてくれた。この当たりにもやはり「いしかり」は素晴らしい船だと実感した。
ここまでレポートしただけでも「いしかり」は確かに素晴らしい船だ」と感じることができたのではないだろうか。しかし紹介したい点はまだまだたくさんある。その一つは中程でも少しだけ触れたがスターライトラウンジで毎晩催されるショーである。乗客が多くても少なくてもここでは毎晩ショーが開かれるそうだ。ショーはジャズボーカル、ピアノ演奏などに加え船長トークショーなどもあり、船客は楽しいひとときを過ごすことができる。またcデッキのミニシアターでは、ほぼ常時映画が上映されている。さらに出港30分前、および10分前に銅鑼を鳴らし、出航の気分を盛り上げようとの気配りもクルーズフェリー「いしかり」のすばらしさを物語っている。
私は今回「いしかり」に乗船して、「名古屋を回らなければいけない」という理由だけで今まで「いしかり」に乗船していなかったことを非常に残念に思った。これから北海道に行くときは、できる限り名古屋回りで「いしかり」に乗ろうと心に誓い、名古屋港でときめきに出会わせてくれた「いしかり」から下船した。
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