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「はまゆう」の乗船レビュー [乗船記] [pid: #410]

東京九州フェリー「はまゆう」に乗船された方から、レビューとスナップショットを頂きましたので紹介させていただきます。

ご存知の通り、「はまゆう」は横須賀と新門司港を結ぶ長距離フェリーで2021年7月1日より就航しています。28ノットを超えるスピードで太平洋を駆け抜け、両港を21時間で結ぶスケジュールで日曜日を除く毎日出港と非常に利用しやすいダイヤです。専ら主な収入源は宅配便などの貨物需要とのことですが、新日本海フェリー系列らしく、大型で旅客設備も非常に充実した立派なフェリーが2隻この航路に就航しています。

横須賀港はフェリーターミナルが建設されてはいるものの、フェリーが入港していないときは、国際航路に就航する自動車専用船やマグロ船なども入港する時間帯別貨物旅客共有港となっています。SOLASに基づく国際港湾施設となっているため、立入禁止区域なども多くゲートやフェンスなどが多数設置されており、他の港のように船に直接近づきにくい構造になっています。

横須賀港フェリーターミナル待合室には大型TVによる出港案内が表示されています。乗船開始は2300となっておりタイトです。

横須賀フェリーターミナルには「はまゆう」の1/100模型が展示されています。垂直ステムを特徴とした船首、前方に直線的積み上げられた船首のキャビンのデザインは、個人的に少し残念ですが、ファンネルのフォルムはよくデザインされていると思います。

全体的にキャビンが前方に寄っており、船体後部ががらんとしているのが寂しいですが、貨物主体の航路であり旅客需要がそれほど高くないので仕方ないですね。船首部に2部屋のみあるバルコニー付きキャビンが本来はもう少したくさん設置されているとバランスがよかったのですが。この航路が成功することがまずは優先。この辺りは次回の新造船には期待したいところです。このあたりは新日本海フェリーの新造船の方がバランスの取れたフォルムをしています。

大きなテレビとシースルエレベーターを中心としたエントランスロビーには、3層吹き抜けになっています。ベージュのソファーが半円状に配置され、レストラン、売店、インフォメーションなどに簡単にアクセスできるように鉢されています。木目調を基調とした船内には各所にグリーンも配置され目にもやさしいインテリアです。

旅客居住層は3層。船体の模型を見る限りでは客室が小さく感じられてしまうものの、本船の全長が220M越えと通常のフェリーより20Mほど長い大型船であることを考えると、客室スペースが狭苦しいほどまでに旅客設備を削っているわけではないようです。

太平洋側に就航するフェリーとして初めて露天風呂を備え、洋上での温泉タイムを楽しむことができます。就航当初は感染症流行のの影響でサウナの営業が見合わせられていましたが、年末からは営業開始するようです。新日本海フェリーのフリートと比べると小さめですが施設としては十分楽しむことができるでしょう。

キャビンはバンクベッドであるとはいえ、上下互い違いに設けられた出入口の関係で、ある程度のプライバシーの保たれるツーリストAから、実質的に一人用個室となるツーリストS、窓付きのステートルームと、ベランダ付きのデラックスルームと、大きく4つのカテゴリーからチョイスできます。このうち、ステートルームにはウィズペットルームも完備しており、ペットと一緒に旅行を楽しむことも可能です。

通常期であれば、横須賀-新門司間のツーリストAが12,000円、ツーリストSが18,000円と割安なのも嬉しいところです。とはいえ、ツーリストSは実際には6-8人部屋で、1人用区画がドアで区切られた形で提供されているため防音性は高くなく、隣室の声が聞こえてしまうとの声もあります。ステートルームやデラックスルームになるとそれなりに値が張るので目的に応じて使い分けたいところです。

ほぼ同じ航路を二晩かけてに就航するオーシャン東九フェリーの場合、ツーリストAに相当するランクでも18,800円するので、単純な一人旅であれば東京九州フェリーの方が割安。とはいえ、オーシャン東九フェリーの場合、22,800円で窓付きの2人用個室を占有できてしまうので単純比較が難しいところでもあります。

23時55分、1日が終わり街がほぼ静まり返った時刻に、「はまゆう」は静かに横須賀港の岸壁を離れます。夜の出港は船や埠頭の照明が水面に反射して美しく何度見ていても飽きません。横須賀港は、東京湾口に近く航路制限がしばしばかかる東京湾を奥深くまで入っていく必要がないため、物流の担い手であり、定時性、高速性が求められている長距離フェリーにとっては理想的な発着港です。

就航当初は、かつて大分行きのフェリーが就航していた久里浜港から発着するものと思われていましたが、久里浜港内が狭く220Mもの大型船が定期的に着岸するのは難しいとのことから、横須賀港に就航することになりました。先に記した通り、横須賀港はSOLAS港湾であるため時間帯毎の運用が必要になります。また住宅や救急医療施設に近接したりしているために騒音や安全確保など課題もあります。さらには横須賀市内への道路アクセスが混雑し渋滞しがちだという指摘もあります。

とはいえ、電車の駅から徒歩でアクセスでき、さまざまな観光施設にもほど近い場所に位置しているため、横須賀港は関東圏で最もアクセスしやすい港であることは間違いありません。また横須賀し中心部と横浜横須賀道路を結ぶアクセス道路である本町山中有料道路の通行料金が、東京九州フェリーの就航と同時の2021年7月から無料になるなど、追い風の要素も多いので、東京九州フェリーにはぜひこの新しい太平洋の大動脈を成功させていただきたいものです。

翌朝、船尾から現れる朝日に迎えられながら、船は紀伊半島沖の太平洋を28ノット(時速50km)で西走しています。東京港を2200に出港してきた伊豆七島航路の「さるびあ丸」や「橘丸」、1930に出港してきた徳島経由新門司行きの「フェリーびざん」は未明のうちに追い抜いてしまいました。乗船日当日はデッキへの夜間の立入が制限されており、残念ながら朝日を見ることはできませんでした。

数々のレビューを読むと、高出力のエンジンを唸らして走る本船は他のフェリーに比べ若干騒音や振動が大きいという指摘もあります。とはいえ、台風や低気圧など様々な悪条件が重なった航海でも、これまでほぼ定時で運行しており、「はまゆう」型フェリーのスペックの高さは明らかです。

5階右舷後部にあるレストラン「うらら」は、横須賀出港便については、夜食(23:30-01:00)、朝食(08:00-09:00)、昼食(12:00-13:00)、夕食(18:00-19:00)の営業。木目調のインテリアが施されており、通常の4人掛けテーブルに加え、窓側に向かってカウンター式のテーブルが特徴的な配置です。

窓から見える大海原が素敵です。

レストランメニューは「三崎港まぐろ&湘南しらす丼」や「横須賀海軍カレー」、「横浜サンマー麺」、「門司港レトロ焼きカレー」、「長崎ちゃんぽんセット」、「博多一番どり唐揚げ定食」、「鹿児島産とんかつ定食」などご当地メニューが目立つ。東京九州フェリーオリジナルと銘打ったハンバーグやビーフシチューも気になります。

6階後部には海を見ながら汗を流せる「スポーツルーム」が設置されており、サイクリングマシンをはじめとする各種エクセサイズマシンが設定されています。残念ながら感染症の拡大により、就航時より当面は閉鎖されていますが、感染症が一段落し本来のサービスが復活する時が楽しみです。

海に向かってガラス張りの「スポーツルーム」となっているので、船内にも自然光が入りとても明るく快適な空間となっています。 

「はまゆう」、「それいゆ」の魅力の中でも、かなり大きな割合を占めているのが、海に面した開放的な露天風呂です。新日本海フェリーグループが他社に先駆けて導入した施設で、2021年現在、導入されているフェリーは、新日本海フェリー、阪九フェリー、東京九州フェリーによる運行船のみです。

昔から長距離フェリーでは展望大浴場というのが定番の施設でしたが、夜になると外は真っ暗で実際には何も見えないことがほとんどでした。ガラスに向かって近づくとわずかに、海の波が見える程度です。ところが、露天風呂になると、完全に外部デッキに設置されているので海の波はおろか、海風まで感じながらリラックスすることができます。しかもハウスの一部を切り欠いたような形で露天風呂が設置されているので風対策もバッチリです。

閉鎖されていた船首のフォワードサロンも解放され。ブリッジと同じ視点から高速フェリーが太平洋を疾走する様子を見ることができます。90度直立の窓の前にはチェアが並べられ、部屋の後方にはソファーも設置されています。

ゆっくりとフォワードサロンで昼寝をするのも気持ちよさそうですが、そろそろ新門司から横須賀に向かっている「それいゆ」とすれ違うはずです。

09:30頃、紀伊半島の潮岬沖合で、昨晩新門司を出港してきて横須賀に向かっている僚船「それいゆ」とすれ違いました。すれ違いの際は船内でも放送はあるのですが、両船の相対速度は100km/h超となるのでかなり一瞬で過ぎてしまいます。乗船の際はMarine Trafficなどですれ違いの時間を予測しておくと見逃さないかもしれません。当日は薄暗い曇り空の中でのすれ違いとなりました。

この時点で新門司までの航程のほぼ半分が過ぎたことになります。

ちなみに本船「はまゆう」は横須賀市の花、そして姉妹船の「それいゆ」は北九州市の花であるひまわりをフランス語にしたものだそうです。

生憎の曇り空の中ですが、太平洋上を27ノットで西走しています。午後になってくると船尾のバーベキューガーデンも営業します。炭のバーベキューだと最高なのですが船上では火器厳禁なので、ホットプレートでバーベキューを楽しむ仕組みになっているようです。レストラン後部に位置し風を遮る風防もついているので落ち着いて食事をすることができます。夏季には最高ですね。

大きなファンネルの後ろは広い甲板スペースになっています。残念ながら最後尾まではいくことができませんが高速フェリーが太平洋を疾走する様子を眺めることができます。(外部甲板は夜間閉鎖されることが多いようです。)

夕方1630。西の空が少しずつオレンジ色に染まっていきます。船は高知県足摺岬を回って豊後水道へ入り、沖の島、鵜来島の沖合に差し掛かりました。高知県最西端の島です。後方には姫島や水島の島嶼群も見えています。

この鵜来島は宿毛湾の沖合23Kmに浮かぶ小さな島で人口20人。民宿が4軒のみあり、町には自動車が一台も走っていないのどかな島です。周辺の海にはサンゴやたくさんの熱帯魚やウミガメが生息しています。海中の写真などを見ると沖縄の海に匹敵するような大きなテーブルサンゴや魚影の多さに驚かされます。シーズンを通じて釣り客には人気があり、夏季にはシュノーケリングも多いようです。

これらの島へは、九州行きの宿毛フェリーの発着する片島港から宿毛市営の渡船が1日2便。運賃は片道1330円で所要時間は最短50分。便により直行もしくは沖ノ島経由での運行になるようで所要時間は便により異なります。

船は引き続き28ノットの高速で豊後水道を新門司に向かって北上していきます。

夕食を終え、しばらくすると船は、夜闇の周防灘を西走し、関西方面への長距離フェリーとすれ違った後、定刻21時に新門司港のフェリーターミナルに到着しました。四国・関西方面に向かう全てのフェリーは既に出港済みのため,大きな新門司港の岸壁はガランとしています。東京九州フェリーの発着する専用岸壁は,阪九フェリーなどの発着する岸壁の向かい側に設けられた岩壁で、海からくると津村島の少し手前に位置しています。

21時間の船旅というと長いという印象がありますが、船内には快適な寝台が設けられていますし、電波も届かないようなところでゆっくりと流れる時を感じるのもいいものです。少しお時間に余裕がある時は「人生に船旅を」お薦めします。